森ブログ

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国語における大学入試改革のゆくえ

 

先日Twitterでこのような投稿を見つけた。

  

 確かにこの通りならば恐ろしい事態だが、実際は「文学国語」か「論理国語」のどちらかしか選択できないわけではなく、「国語表現」と「古典探求」を含めた4つが選択科目となっている。詳細は以下の通りである。

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文科省の答申 (PDF) からの抜粋

 これを見ると「言語文化」や「現代の国語」に文学に触れる機会が少し用意されているものの、全体的に「実用文」を用いた授業が増え、実際に文学に触れる時間は減ると考えられるだろう。さらに大学入試改革によってセンター試験の代わりに定められた「大学入学共通テスト」では、記述問題が課されるという。この記述問題についても採点基準が曖昧だとか、授業で記述問題に時間を割かなくてはならない等、多くの課題があるようだ。ここに実際に大学入試センターが作成した問題例 (PDF) へのリンクを貼っておく。

 確かに近年はSNSなどが広まりデマやフェイクニュースが拡散しやすく・されやすくなったため、情報を正しく読み取り発信する能力の育成は最重要項目ともいえるだろう。

また、今回の入試改革に少なからず影響を与えているもう一つの背景として、PISAの結果が考えられる。PISAとはOECD(経済協力開発機構)の加盟国を中心に3年に一度、15歳を対象に実施されている試験のことである。

PISAは読解力・科学的リテラシー・数学的リテラシーの分野から問題が出題され、それぞれの分野において国別ランキングが発表されている。2015年の日本のランキングは、数学的リテラシーが5位、科学的リテラシーが2位、そして読解力が8位だった。しかし2012年の結果では読解力分野が4位だったため、文部科学省はこの読解力低下の対策として学習指導要領の改定を挙げたのである。

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国立教育政策研究所の資料(PDF)から抜粋

このように経緯を説明してきたが、私が考える不安要素としては、文学を嫌った多くの受験生が「論理国語」を選択し、結果として高校の授業でも「実用文」一辺倒になるのではないかということだ。実際にそこまで偏ることは無いと思いたいが、すぐに役に立つものに目を奪われ、今後国語教育における文学の縮小が進むようなことは避けたい。選択科目にすることで生徒側の自由度は上がるが、それが生徒たちにとって本当にプラスになるかよく考える必要があるだろう。